近年、日本の高齢化社会が進む中で、末期がんや難病などの病気を持つ高齢者のケアができる老人ホームのニーズが高まっています。そんな中で全国的に普及が進んでおり、注目されているのが「ナーシングホーム」です。
ナーシングホームとは、末期がんや難病の方を受け入れし、病院のように看護師によるケアを主体に行う老人ホームです。今回は、ナーシングホームの特徴やその役割について詳しく解説します。
ナーシングホームの特徴
24時間看護師が常駐
ナーシングホームには、看護師(訪問看護師)が24時間常駐しています。建物の作りは一般的な老人ホームとほぼ同様ですが、人工呼吸器や吸引器具も設置しているケースもあり、医療的なケアが充実しており、看取りにも対応しています。
スタッフの人数が看護師>ヘルパーの場合もある
ナーシングホームでは一般的な老人ホームとは異なり、看護師の配置人数がヘルパーよりも多いホームも多く存在します。
入居対象者
ナーシングホームは、どんな人でも入居できるわけではありません。基本的な入居対象者は、厚生労働省が定める指定難病(パーキンソン病などの別表7に該当するもの)または末期がんの高齢者です。
下の表は、厚生労働省が定める「別表7」の詳細な疾病リストです。
<ナーシングホームで入居対象となる主な疾病リスト>
末期がん
頸髄損傷
脊髄小脳変性症
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
重症筋無力症
パーキンソン病(ホーン・ヤールの重症度がⅢ以上)
筋萎縮性側索硬化症
進行性核上性麻痺
多発性硬化症
大脳皮質基底核変性症
後天性免疫不全症候群
シャイ・ドレーガー症候群
スモン病
球脊髄性筋萎縮症
ハンチントン病
亜急性硬化性全脳炎
脊髄性筋萎縮症
プリオン病
ライソゾーム病
副腎白質ジストロフィー
線条体黒質変性症
オリーブ橋小脳萎縮症
特定医療費(指定難病)受給者証の申請を行う必要がある
ただし、医療保険でのケアを受けるには、特定医療費(指定難病)受給者証の申請が必要です。特定医療費(指定難病)受給者証を受け取り、上記の表に掲載された病気に該当してはじめて、ナーシングホームで医療費助成により医療保険でのケアが受けられるようになります。
申請方法は、難病支援センターのホームページに掲載されています。
介護認定がなくても入居できる場合がある
厚生労働省が定める別表7の疾病に該当する場合、介護認定がなくても入居が可能となる場合があります。
医療保険を活用したケアで様々な医療行為に対応
一般的な老人ホームでは、介護保険を元にしたケアが中心となり、老人ホーム内で施せる医療行為は限定的ですが、ナーシングホームでは、主治医による特別指示書をもって医療保険を利用した訪問看護が受けることができます。これにより、1日2~3回の看護ケアが可能となり、高度な医療ケアを必要とする高齢者も安心して生活を送ることができます。
下の表は、ナーシングホームで対応可能な医療行為の一覧です。
<ナーシングホームで対応できる主な医療行為>
人工呼吸器
たん吸引
在宅酸素療法
気管切開
褥瘡
経管栄養
胃ろう
ストーマ
バルーンカテーテル
インスリン投与
麻薬内服薬
点滴
抗がん剤内服
月額の基本料金
ナーシングホームには、月額の基本料金(家賃・管理費・共益費・食費)が10万円以下に抑えられた低価格のホームも多く存在し、諸々の費用含めて総額15万円程に抑えることができる場合も多いです。これにより、経済的な負担を減らしながら、適切なケアを受けることができます。
生活保護受給者の入居
ナーシングホームには、生活保護受給者でも入居が可能なホームもあります。これにより、経済的な背景に関係なく、必要なケアを受けることができるようになっています。
ナーシングホームの入居手続きの流れ
ナーシングホームの入居手続きの流れは、一般的な老人ホームとほぼ同じ手続きを行っていきます。
一般的な老人ホームの入居手続きの流れは、下記リンクのページをご参照ください。
まとめ
ナーシングホームは、末期がんや難病があり医療的なケアが必要な高齢者にとって、安心して生活を送ることができる施設となっています。更に経済的な負担を考慮しながら、適切なケアを受けることができます。もし、自分自身や家族がナーシングホームの入居を検討している場合は、上記の点を考慮しながら、最適な施設を選ぶことをおすすめします。