数多くの老人ホームへの入居相談をいただく中で、「今から探すのは早いのではないか」「周囲に相談したらまだまだ家で暮らせるよ、もったいないと言われて入居を迷っている」というお話をよくいただきます。
結論から言うと、「人それぞれ事情は異なるので、自分たちの考えるタイミングで入居を検討」しましょう。
今回は過去の相談事例や筆者の家族の体験談から、老人ホームへの入居のタイミングについて解説します。
お客様がおっしゃった、ずっと忘れられないお話
筆者は通算1,000件以上の老人ホームへの入居相談に対応してきました。過去から数多くのご相談をいただいた中で、お客様から話を頂いた、今でも鮮明に記憶している忘れられないお話があります。
そのお客様はご両親の老人ホームへの入居を検討している方でしたが、その方は「親が自宅で暮らすサポートをしてあげたい、見てあげたい気持ちより、毎日お世話をすることへのしんどさが上回った。だから親のお世話をしてもらえる老人ホームを探すことにした」というお話です。筆者はそのお話聞いたとき、本当にその通りだと、心から共感しました。
認知症を患った筆者の祖父のエピソード
なぜなら実際に筆者も、かつて認知症を患った祖父と同居していた時にそれを肌で痛感したからです。
筆者の祖父は元々物静かながら、時に冗談を言うような人と関わるのが好きな性格の人間でした。
しかし、認知症を患ってから、日々認知症によってシャワーを出しっぱなしにしてしまったり、認知症による徘徊が毎日のように起こり、それを家族が注意しては祖父本人は怒り、時に祖父のお世話の中心を担っていた筆者の母(本人にとっての嫁)手を出してしまうということが起こり、時を重ねるごとに家の中に不穏な空気が充満していったのです。
できるだけ自宅での生活を継続できるよう、デイサービスを利用しながら自宅での生活を継続していたものの、明るい性格の筆者の母がついに精神的に参ってしまい、限界を超えたと筆者の父(本人の息子)が意を決して、老人ホーム探しを決意。
認知症の方の専門施設であるグループホームへの入居を決め、地元のグループホームに入居してもらったのです。
最も良くないのは、家族全員が共倒れになること
老人ホームを検討していくにあたって、多くのご相談者の方が気にされるのが「老人ホームに入居させることが申し訳ない」という罪悪感です。
しかし、たとえ親子であっても、特に現代においては急速に世の中が変化し、ライフスタイルや考え方にギャップが生じやすい時代です。
忙しない日々が続く中で、我慢してお世話を続けてストレスがお互いに溜まり、それが爆発してしまった結果、重い病気にかかったり、メンタルを壊してしまっては本末転倒です。
第三者の力を借りることは、全く恥ずかしいことではなく、特に老人ホームは法律で定められたセーフティーネットなので、それを利用することに躊躇する必要は全くありません。
老人ホームに入居した本人にとっても幸せになれるケースも多い
かつて筆者の祖父はグループホームに入居したという話を書きました。
その後、グループホームから介護付有料老人ホームに転居し、最期は病院で亡くなりましたが、老人ホームに入居したことでスタッフや入居者の方々に対して冗談を言うなど、祖父本来の自分らしさを取り戻していました。
楽しく日々を過ごすことで、気がつけば老人ホーム内のアイドル的存在になっていました。
筆者ら家族も平穏な日々が戻り、1ヶ月に1~2回程度面会をして、その度に老人ホームの外で回転寿司などを食べに行くことで、祖父本人と家族の程よい距離感で接することで、お互いに良い形でコミュニケーションを図ることができました。
10年程前に亡くなった際も、お通夜や葬儀の合間に(祖父は)良くしてもらってよかったよねと、親族同士で話をしたことを今でも覚えています。
介護度に関係なく、しんどいと思ったら第三者のプロに相談する
人それぞれ、悩みは十人十色であり、その重さは自分たちにしかわかりません。
近所の方や知人、親族に相談しても、「まだその状態なら家で生活でしょ」と、無責任なことを言われることもあります。
介護度に関係なく、もうお世話をするのがしんどいという気持ちが強くなったら、まずは地域包括支援センターやケアマネジャー、老人ホームの紹介会社など、第三者の相談窓口を頼って、相談していきましょう。
昨今、老人ホームには多様なニーズがあり、自立型から介護特化型まで、様々なホームが全国に存在します。
まずは第三者のその道のプロに相談して、老人ホームへの入居のタイミングを検討していくのが良いでしょう。
まとめ
・老人ホームへの入居のタイミングは人それぞれ事情により異なる
・お世話ができない、しんどいというのが上回った時が具体的な入居検討時期の目安となる
・お世話がしんどいと思うのは介護度に関係ない
・お世話がしんどいという気持ちが強くなったら、地域包括支援センターなど、第三者のプロに相談する